無駄な金を払い続けるアウトソーシング:ぼったくられてるだけだぞ⓵
市役所の窓口業務がいつの間にか外部業者に外注されるのがスタンダードになってきたが、コールセンターと言い客先常駐のシステム保守と言い、これらのアウトソーシングには価値があるのかと問いたいものである。
システム屋の客先常駐と言えば、開発案件に関してはかなりブラックな案件が多いことも確かだ。納期に追われ、休みを取れず、残業時間が多くなるということは、開発業務なら良くある話である。
方や、保守・運用業務に至っては必ずしもそうとはならないことも多く、酷い話では「出勤して朝メールを確認するだけで1日の業務が終わる」と言ったことも耳にする。こうした現場では当然ながら専門性など身に付かず、若い内に就いてしまうと後のキャリアで苦労することになる。
正社員がやるほどの仕事じゃないから
アウトソーシングが広まった要因としては、厳しすぎる解雇規制によって、会社運営側が社員を雇いたくないということが大きい。自社で雇うと解雇できないから外注するというのはわからなくはない。
問題はアウトソーシングをする理由の具体化の無さと、アウトソーシングをすることによる無駄なコストの発生だ。
例えば「正社員がやるほどの仕事じゃないから」という理由で派遣や外注を使うケースは良く聞く。すると何が起こるかと言えば、年収250万円の派遣や常駐ベンダー社員が業務に勤しむ傍ら、年収700万円の主任がスマホでゲームを楽しんでいるなどと言う話は、IT業界にいると少なからず聞く話である。
こんなものは自己満のアウトソーシングそのものだ。尤も、こうした年収700万円の主任が遊んでる傍ら、年収250万円な「協力会社」社員の会社には、それこそ年額800万円や1000万円払ってるというのがアウトソーシングである。
その逆も然りで、自社の社員が忙しそうなのにアウトソーシングで常駐している協力会社社員は暇すぎてネットサーフィンに勤しむしかないケースも多々ある。これは外部ベンダーに対しては「契約外の仕事をさせられない」ということからそうなるのだが、こうなるとアウトソーシングする意味自体がそもそも皆無である。
「毎日発生し」かつ「絶対に無くせない業務」は外注に向かない
通常、自社の従業者に払う時給を1500円とした場合、アウトソーシングで発生する時間単価は2500円以上は軽く掛かる。アウトソース受託者はここから従業者の社会保険料、有給取得分の賃金、採用に掛かる広告費などを支払っているのだから、受託企業の従事者の給料×2が請負単価と思って良い。よって受託企業の従事者も時給1500円と仮定した場合、アウトソーシングで発生する時間単価は3000円以上は覚悟しなければならない。
もちろん自社で従業員を雇っても社会保険料は発生するものであるから、だいたい従業員に払う給料×1.23が自社で雇ったときの発生費用となる。
コールセンターや役所の窓口の従事者を直雇用した場合、社会保険料を含めた1人月の人件費は30万円と仮定しよう。アウトソーサーに外注する場合、人月50万円以上は最低ラインとして請求される。1人で20万円の差額が発生しているのだから、10人になれば月200万、年になれば2400万円多く逃げることとなる。5年後には1億円の無駄金が発生するわけだ。
しかし、それでも「5年後に業務そのものが無くなる」なら無駄とは言い難い。業務が無くなるのだから、従業員の配置転換かレイオフが必要になるからだ。
そういう意味で「いつか必ず無くなる業務」に関しては外注するのが正解である。
システム開発などは外注されるのが基本だが、ウォーターフォール型開発であれば「いつか開発が終了する」ため、自社で社員を抱えないのが正解なのだ(但しアジャイル開発の場合は開発と保守が永続的に続くため事情は変わる)。
では同様の目線でコールセンター業務や役所の窓口業務を見てみたい。
「ウチはワトソン君が入ったらコールセンターを閉鎖します」
「ウチは窓口業務を完全にPepper君に置き換えます」
これなら確かにアウトソーシングに外注するのはアリである。
コールセンターにしろ役所の窓口にしろ、そこにいた人間をまるまる配置転換するのは大変だ。いつか必ず終わる業務だから外注するべきである。少なくとも筆者なら電話に出れるAI導入したら人間は全員解雇するだろう。人間が電話に出てくれなければ嫌だと言う顧客など、こちらから御免である。
しかし、現実にはコールセンターは無くせる状態になっていないし、役所の窓口を無くすこともまた不可能である。どれだけ電子申請が進もうが役所に来る人は来るのだ。残念ながらコールセンターも役所の窓口業務も、人が要らない時代は来ないであろう。
例えばコールセンターや役所の窓口業務を週2回しか開設しない、月3回しか開かないようであれば、それは外注するのも良いが、どちらも毎日開かれ、かつ無くならない業務であるという点は一緒だ。外注することで無駄な費用が発生しているのである。
因みにITに掛かるシステム運用の外注費は、参考までに時間単価は6000円以上になり、これを8h×20dすれば人月単価96万円になる。
このシステム運用にしても毎日発生する業務であるが、仮にマイグレーションすることはあっても「システムの利用を止める」ということは無いであろう。それならば自社の人間でITの利活用を出来る人材を雇った方が、可視コストだけで50%は下げることが出来るぞ。