SE派遣の経歴詐称強要問題は違法な発注者面接があることも問題だ⓶
派遣法違反の是正こそ先決
SESのエンジニア経歴詐称は当たり前のように行われてきたが、その背景には当たり前のような「派遣法違反」が行われていることにある。
とどのつまり、まず派遣法違反を解消させていかない限りは同様の事態は無くなることがない。
日本と言う国は残念ながら法治国家ではなく、人治国家なのだ。
憲法9条にも見られるように「正攻法で法律を変える」のではなく「解釈改憲によって捻じ曲げる」のが多く見られるあり方であり、派遣法についても「解釈改憲手法」が用いられている。
正面から派遣法を変えるのではなく、派遣法の抜け穴を「解釈脱法」しているのであるから、まず派遣法を適正に遵守させることが先決である。
派遣先(発注者)にも罰則が必要
本来派遣であっても請負であっても準委任契約であっても、発注者が選考に関わることはNGであるが、なんと準委任契約の場合は面接が可能と思っている発注者は少なくないようである。
しかし、現状としては「違法である状態が当たり前化」しており、違法面接が常態化しているからこその経歴改竄なのである。
現状、派遣法は派遣元に対する罰則は多く存在するが、違法面接を行うことに対する派遣先への罰則は甘々な状態であることも、違法状態がまかり通ってしまっている要因と言えよう。
尤も、派遣法による派遣先への罰則が甘々状態とは言っても、職業安定法で労働者供給事業は禁止されているのであり、派遣先が労働者の選考に関わることは職業安定法違反でもある。
何なら請負契約や準委任契約であっても、発注者から業務指示が出される偽装請負がまかり通っていることが、IT業界では少なくない。
ここも建設業界とは大きく異なる点であろう。
SI業界は違法と誤魔化しがまかり通っている
経歴詐称強要が裁判として賠償命令が出された事件は少しばかり波紋はあるだろう。
しかし、経歴詐称強要が起こる背景としては、発注先(派遣会社)の身ならず、発注元(派遣先)企業による違法な面接行為が原因として存在し、その結果として経歴詐称強要が起きているに過ぎない。
派遣先が面接して良いのはあくまで紹介予定派遣など、直接雇用に切り替わる前提がある場合に過ぎない。
発注元による違法な面接が行われているSIビジネスにおいては、派遣元(受注者)だけが賠償や処罰を受けても改善することはなく、発注者が処罰や賠償を受けることで、ようやく是正がされるのではなかろうか。
かつて尼崎市役所で起きたUSB紛失事件は芋蔓式に無断で再々委託をしていたことまで発覚したが、これなど旧ユニシス社の契約違反の最たるものである。
派遣法に違反し、職業安定法に違反し、ユーザーとの業務委託契約までも違反する。
こうした違法や誤魔化しが続けられているのがSI業界であり、こうした業界体質が改善されるには、やはり派遣法違反による派遣先への罰則を強化し、摘発されていくことが第一歩ではなかろうか。
辞めたいのに辞められない日本の仕組み