〚PEファンドの違和感〛セクター分散の仕方などが不自然である⓶
QC視点で見たPEの危うさ

プライベートエクイティファンドの仕組みがオルカンの非公開市場版に近い以上、参加者が求める安心感もインデックス投資家と一致しやすい。
ただし、最大の違いは出口の狭さにある。
今回観察したニューバーガー・プライベート・エクイティファンドは、一般的なPEファンドと比較すれば、流動性資金を確保している点を強みとしていた。
総資金の約5分の1を流動性資産として維持している設計は、確かに業界内では比較的良心的である。
それでも、出口が狭いという本質は変わらない。
筆者が投資信託、とりわけオルカンに対して根源的な疑問を持つのもこの出口戦略である。
株価上昇をリターンとみなす思想に対し、筆者は一貫して配当や利息のみを利回りと考えている。
株価成長を前提とするインデックス投資は、出口時点で多数の解約者が重なる局面に脆弱性を持つ。
特に20〜30年後、日本の高齢化がさらに進行した時代には、連鎖的な解約需要が顕在化する可能性がある。
投資信託の本当に怖い部分は、入口ではなく出口なのである。
ファンドの「業務改善」とQCの業務改善は別物である
PEファンドの特徴は、投資先企業の経営に深く関与し、利益改善後にM&Aなどで売却益を狙う点にある。
ここで筆者が強い違和感を覚えたのは「業務効率改善」という言葉の定義である。
QC検定2級の知識を持つ立場から見れば、業務改善とはQC七つ道具や新QC七つ道具を用い、工程能力指数や品質指標を改善しながら、現場プロセスそのものを高めていく活動を意味する。
しかしファンドの言う業務改善は恐らくそれとは大きく異なる。
実態としては、リストラや固定費削減を中心としたコスト圧縮が主軸であり、QCストーリーに基づく改善活動とは思想そのものが異なると考えるべきである。このズレを強く感じたことは、今回のセミナーにおける最大の収穫の一つであった。
プライベート市場は、基本的に富裕層向けの市場である。
今回のファンドは最低投資額100万円からと、PEとしては比較的低い参入ラインであったが、それでも日本社会全体で見れば決して低くない。
現在の日本では、100万円の金融資産すら持たない世帯が珍しくない。実際、金融資産の多くを60歳以上が保有している構造を考えれば、セミナー会場に高齢者が集中するのは当然である。
むしろ印象的だったのは、そこに中間世代がほとんど存在しなかったことである。
氷河期世代以降の資産形成格差、未婚率上昇、可処分所得の低下。そうした社会構造の歪みが、そのままセミナー会場の年齢構成として現れていた。
これは単なる金融商品の話ではなく、日本社会における資産階級の断絶そのものを映している。
それでも欧州個別株を続ける理由
今回の副次的な収穫は、欧州株の買付コスト構造を改めて確認できた点である。
欧州株は1銘柄1取引あたり15ユーロの手数料が必要であり、2銘柄同時に買えば30ユーロとなる。決して安い市場ではない。
本来であれば、こうした市場は富裕層向けの金融商品に近い。
その中で、マス層に属する筆者が欧州個別株を積み上げている構図は、ある意味で非常に面白い。
だが、だからこそ意味があるとも考えている。
筆者は今後も欧州株への投資を継続する方針である。
投資信託よりも、個別企業のキャッシュフローを直接保有する感覚のほうが、自身の投資思想に遥かに合致しているからである。
欧州個別株は静かな市場である。
だからこそ、十分な銘柄選定力と保有思想がなければ、手数料負けで簡単に優位性を失う。
私自身がこの市場を好むのは、その静けさと構造に自分の投資哲学が適合しているからであり、万人向けの投資対象とは考えていない。



