1月8日(金)に緊急事態宣言が再発令され、飲食店の営業は20時までに制限され、20時以降の外出の自粛も呼びかけられている。就労に当たっては通勤の7割減が盛り込まれ、積極的にテレワークを行うことが政治サイドからは推奨されていた。
しかし、現実の会社員は宣言後の3連休明け、通常通り満員電車で出勤する様子が見られている。
緊急事態宣言再発令前に行われていた日本トレンドリサーチの調査では、再発令に賛成する声が7割を超えていた。
にも拘わらず満員電車は継続され、とても7割の人間が再発令を支持したとは思えない光景が広がっている。
コロナより先に終息したのはテレワーク
日経新聞を読んでいると、テレワークに意気込む企業の様子がよく報道されている。
それらの企業は日立や東芝、富士通と言った大手のIT企業が中心だ。いわばテレワークが商材になる企業であり、あまりどの企業に対しても参考になるものでは無い。
恐らく本当に必要になるのは中小企業における成功例となるだろう。テレワークは実施した企業の約3割が実施を止め、かつその半数は再度実施する気はないと意思表示している。
少なくとも今テレワークを継続できている企業は、コロナ前から下地があったのではないかと考えられる。
ことに、中小企業に関して言えば、テレワークを認めていない企業は6割も存在する。
テレワークに当たって大きな課題となるのが生産性とセキュリティーであろう。
セキュリティーインシデントについては、NTTコミュニケーションズの記事によると、1年間で2倍以上のインシデントが発生している。
大きな企業ならいざしらず、セキュリティ対策にかける費用の捻出が中小企業には厳しいという側面はあるだろう。
「1度目の緊急事態宣言では在宅勤務出来ていたのになぜ?!」という声も聞かれるが、実質は「在宅勤務と言う名のただの待機」をしていた可能性もある。
ハイコンテクスト文化からの脱却も必要になる
アフターコロナでもテレワークを希望する割合は6割もいる。なのに現実の緊急事態宣言再発令下の日本では、依然として満員電車が続いているのが実情だ。
感染を抑えるために発令された緊急事態宣言が、何も機能していない。飲食店や観光産業が一方的に煽りを受けるような事態になってしまっており、これらの産業は既に限界を迎えていると言って良い。
テレワーク継続を望む労働者が6割いる中、テレワークを終息させた企業は15%にも上る。再検討を行う企業も平時はテレワークを控えたいことが伺える。
テレワークの導入が上手く行かない要因にはセキュリティ対策の問題や資金的な問題もあるが、日本のコミュニケーション文化の影響も大きい。
日本同様、テレワークが思うように普及しない国がある。フランスだ。欧州と聞くと言語によるコミュニケーションが中心で、空気を読む習慣は薄いと思われがちだが、フランスは違う。フランスは欧州の中ではややハイコンテクスト文化の国なのだ。
もちろんフランスでもテレワークは行われているが、一般的に思われる在宅勤務の姿とは異なる。フランスのテレワークは週2回まで。つまり週3回は出勤するわけだ。
アメリカではニューヨークやカリフォルニアでは出勤禁止令が感染拡大期に出されているが、大きな混乱が起きずに済むのはローコンテクスト文化の影響も少なくない。対するフランスでは、やはり会わないと生産性が上がらないのだ。
感染拡大を抑えるために制限しないといけないものがあるとするなら、筆頭に上がるのは出勤だ。
「満員電車でクラスタは発生していない」という声も聞かれるが、満員電車ではクラスタは発生しないし、しようもない。
満員電車で感染しても「経路不明」になるだけであり、クラスタは乗客が降りた先の職場や施設で発生するのだから。よって感染拡大阻止に注力するなら出勤の禁止をしなければならないのだが、少なくとも自民党はそれを良しとする政党では無いだろう。
日本よりはローコンテクスト文化のあるフランスでさえ簡単には行かないテレワーク。もちろん日本のテレワーク化も難航するだろう。
「感染は怖いのに満員電車で出勤を続ける」という、矛盾した行動を取る会社員達。感染拡大はまだまだ続くことになりそうだ。