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国際条約

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「ハラスメント禁止条約に先進国はいない!」大事なのはそこではない

仕事におけるハラスメントを禁止する国際的な条約が6月25日を以て発効した。
参加する国は7か国であり、いずれも先進国では無いことから、ネット上では「参加する価値なし」と言った声も見受けられる。
言わば「他の先進国が参加してはじめて参加する価値がある」というのが、日本の国際的な条約に対するものの考え方であり、前例踏襲主義的な日本のサラリーマン精神としては至極当然の発想と言えよう。
「日本には独自のハラスメント禁止法があるから条約参加は不要だ」と考える意見もある。
しかし、思うに「他の先進国が参加していないから批准する価値が無い」というのは、些か違うのではなかろうか。
言わば「常に二番煎じにしかなれない日本人らしさ」と言えばそれまでだが、そもそも国内の法律で充分に労働者の人権が守られているのか。今後、出生率は回復することのない日本で、労働者の人権を守る国際的な取り組みに参加せずやっていけるのか。この2つの観点から議論が必要である。

 

パワハラ防止法で労働者の人権を守れるか

2020年の6月から大企業ではパワハラ防止法がスタートし、中小企業には2022年の4月から施行される。
確かに「国内向けのハラスメント禁止法はある」のだが、この法律、本当に機能していると言えるのだろうか。
結論から言って効用は怪しいとしか言えないだろう。
そもそも罰則がない。違反した事業主に出来ることは助言、指導、勧告、公表と言った程度で、実行力に乏しいことは明らかである。
加えて、就活生はこの法律で保護されない。パナソニック産機システムでは内定者がSNSハラスメントで辞退を強要され、痛ましい事件が起こったが、こうした事件に対してパワハラ防止法は無力だ。
もとより、パワハラ防止法が本当に機能するかの疑わしさも勿論だが、電通はこの5年で変われたのかと言う議論も必要であろう。果たして電通は労働者の人権を尊重できる企業に変貌できたのか。その見込みは極めて薄いと思われるが、如何か。

出生率の上昇しない日本:移民は「マシ⇨より良い国」への転換へ

第二の観点として、出生率が今後も上昇しないと見込まれる日本で、移民に頼らず社会を維持できるのかという観点だ。
少なくとも現状では社会保障の崩壊は確定的であり、まず年金から崩落する。健康保険の自己負担率は5割までは高める必要があろうし、ややもすれば医者と看護師の不足で医療崩壊待ったなしである。
コロナ禍で度々叫ばれてきた医療崩壊とは根本的に異なる、恒常的な医療崩壊だ。
出生率2.05を超えることは無い以上、日本は今後、移民無しでは社会は回らなくなる。それが日本一国だけなら良いが、今や中国も出生率は日本と同程度のレベルになっており、今後は中国も移民を獲得していく時代となるのだ。
もし現状の日中をベースに労働者獲得戦を行った場合、高度技能労働者は中国を目指すであろう。というより、現状ですら日本は中国の「千人計画」の餌食となり、研究者が流出しているのだ。良い待遇を求める労働者は、アメリカか中国を目指す。そういう時代になっていくのだ。
今の移民の考えとしては「自国よりマシな環境で生活したい」というものがメインかもしれない。ただし、今後は労働力の不足していく先進国はいくつも出てくるであろうから、価値観は「より良い環境(国)で生活したい」にシフトしていくであろう。
果たしてその時代になった時、日本は「労働者の人権が守られ、平穏に暮らせる国」として選ばれるのか。それとも「給与も働く環境も良くない国」として忌避され、減っていく若者、増える高齢者の世で社会保障も削られ、阿鼻叫喚の声を上げるのか。
「他の先進国が批准してないから日本が参加する価値無し!」
そう切り捨てるのは簡単だが、今後の少子高齢化と言う課題を前にし、労働者の安定的な獲得が必要になる時代。
労働者から選ばれ、愛され、日出る日国になるか、人手不足倒産を加速させ、日没する日本にしていくのか、真剣な議論が必要であろう。

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国際条約   2021/07/04   センチュリー・大橋
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