12月29日の日曜日、Twitterでハッシュタグをつけて拉致被害者全員奪還を叫ぶTwitterデモが行われた。
このデモは毎週日曜日に行われているようで、恒例の行事となっているようだ。
拉致問題は安倍首相も2017年の9月17日に「今年中に全拉致被害者の救出を!国民大集会」へ出席している。
拉致被害者の家族の前で「拉致問題は、安倍内閣の最重要課題であり、最優先で取り組んでいくという姿勢にいささかの変わりはありません。」と述べているものの、一向に前進の兆しは見えない。
それどころか、未だ「首脳会談の一度すら行われていない」という状態である。
韓国側の協力は不可欠
対北朝鮮の防衛ラインという面において最前線にいるのは韓国であり、かつ北朝鮮に関する情報をいち早くキャッチできるのもまた韓国である。
GSOMIAも本来は日本が北朝鮮の情報を得るために必要な軍事協定であって、だからこそ対韓輸出制限問題を巡って彼らは外交カードに切ってきたのである。
また、拉致問題というワン・イシューを取っても、韓国は日本同様被害国だ。本来であれば文政権側に窓口になってもらい、彼らを通して日朝首脳会談の機会を得るなどしなければ、拉致問題が前進できることはないだろう。だが、今の日韓関係は最悪の状態であり、この状況下において韓国側の協力を得られることはないだろう。もちろん他人事であるアメリカが日本側に手を貸すはずもなく(アメリカが北朝鮮絡みで関わるとしたらレア・アースが目的であろう)、日本が単独で金正恩と交渉しなければならないことになる。
拉致被害者の奪還に当たっては韓国側の協力も必要だが、一方で、このツイートデモを行っている面々は韓国への嫌悪感情を持ったメンバーで占められ、拉致被害者全員奪還を叫ぶ同じ口で「日韓断交!」を叫んでいたりもする。では仮に日本が独力で北朝鮮と交渉しなければいけないとしよう。いま、金正恩はどう言っているか。
「拉致問題は解決済み」
これが北朝鮮の公式の立場だ。よっていくら日本が単独で北朝鮮に交渉を求めたところで正恩が応じる理由はなく、拉致問題は解決しない。
「今年は解決できませんでした」⇨解決の見込みがあるの?
「今年は解決となりませんでしたが」で始まるツイートが虚しい。
未だ首脳同士の会談が一度も果たされず、かつ「そこに至るための経路が全て絶たれている状態」の安倍政権で一体何ができるのであろうか。
かつて北朝鮮とのパイプを持っていた政治家はアントニオ猪木であった。とある社労士はこう言っていた。
「安倍的には猪木が拉致被害者を取り戻すのが最悪のシナリオなんじゃないでしょうか。」
これは現にその通りであろう。行政権を持つ首相が北朝鮮との何らパイプを作ることすらできない中で、一国会議員が北朝鮮とパイプを持って拉致被害者を取り戻すというのは、首相の面目が丸潰れであり、政権支持率も大きく下落するからだ。
小泉政権時は韓国との関係は良好であり、かつ正日の油断もあったからか、5人取り戻す成果を出している。
しかし、安倍政権ではこの成果は出せないであろう。アメリカが日本に手を貸す理由もなく、韓国との関係も最悪な中で、一体どうやって北朝鮮との首脳会談を実現するのか。その糸口は全く見えていない。