右派からも左派からも総スカン
写真:秩父市のフリー写真素材より
東京一極集中は少子高齢化を進めてしまう深刻な問題であり、一極集中是正はあらゆる方向から対策は急務であり、流石に自民党とてそれは理解していよう。
進学率と出生率を47都道府県で相関分析した場合、概ね負の相関が見られるのだが、中でも東京都と京都府の出生率の低さは群を抜いており、進学や就職を機に上京した人間は、概ね5人に1人は結婚しないということが分かっている。
次にデータとして見た場合に、上京する男女比で言えば女性の方が多いことが分かっており、如何に女性に東京から地方へ視野を移してもらうかと言うのは、実は重要な要素でもある。
そのために従来の施策に加えて追加検討された要素に「結婚を機に移住する女性」へ最大60万円の支援が行われる施策が検討されていたのだが、敢え無くお蔵入りとなった。
右派からは「男性差別だ」と野次が飛び、左派からは「女性を軽く見ている」と怒号が飛ぶ。
双方共に「正反対に近い理由で反対している」のであるが、しかし「政策に反対している」という一点のみは一致してしまい、この案は引っ込められることとなった。
政策そのものを吟味したのか
しかし、この右派左派双方の反対論には大いに違和感が残るところである。
この大きな違和感は「本当に政策そのものを吟味したのか」と言うことだ。
まず、現行の日本国憲法においては、如何に少子化が進んで国難になろうとも、個々人の自由意志を制限することは不可能である。
一方、少子化対策と言うのは実はリベラル的な思想との相性は最悪である。
生き方において人々の自由意思が尊重される限りにおいて、結婚というものを強制することは不可能であり、それを含めて自己決定権を国家が制限することは不可能なのである。
コロナ禍の日本版ロックダウンはその良い例だ。
政府や都知事が「外出自粛要請」をしたところで、従わなかった者に罰則があったわけではない。
個々人の自己決定権は憲法で保障されているからこその「自粛要請」だったのだ。
そして東京女性の結婚に伴う地方移住支援にしても、その発想としては「個々人の自己決定を国家が制限できないからお金で解決できることはお金で解決しましょう」というリベラル的発想である。
つまり「条件が合わなければ飲む必要はない」のであり、別に東京に住む女性に地方移住を強制するものではないし、条件が良いと思えば飲む、悪いと思えば無視すればいいだけの話なのだ。
「何が行われたか」ではなく「誰が行ったか」を重視してないか
今回の政策は本当に政策そのものが吟味されたのかが疑わしいのが「何が」ではなく「誰に」行われたかしか見られていない気にしかならない。
恐らく安倍晋三が当の政策を実施したなら、右派はこぞって賛同したであろう。
反対に枝野幸男がこの政策を実施していたら、左派は「女性の当然の権利だ」と主張したのではないか。
幸か不幸か、岸田文雄は右派からも左派からも嫌われてしまっているがために、総スカンを受けることになってしまった。
「何が行われるのか」と「何で行われるのか」と言う、政治において重要な論点が抜け落ちてしまっているのだ。
そのため、この議論は右派も左派も感情的に反対しているだけに過ぎないというのが、現状ではなかろうか。