コオロギ食は本当にSDGsになるのか
写真:金沢市のフリー写真素材より
コオロギ食はSDGsの一環として広まっているものだ。
人口増により、将来起こり得る食糧危機に備えるという名目であるが、果たしてコオロギ食が本当にSDGsに繋がる活動かが甚だ疑問である。
既に述べたように、コオロギは珍味の域を出ていない。
更に環境問題と言う観点で見ると、コオロギは日本産のコオロギを使うのか、外国産のコオロギを日本で生産するのかによって、御事情はまた異なる。
まかり間違っても外国産コオロギなどを使ってしまうと、万一脱走でもした暁には生態系のバランスを崩してしまう問題が発生する。
何より、旺盛な繁殖力という点でSDGsに役立つというところであっても、そもそも旺盛な繁殖力を持つ生き物はコオロギ以外にも沢山いるのである。
ブラックバスはただ捨てられ…
例えば「旺盛な繁殖力を持つ生き物を食べる」と言う点なら、ブラックバスを食べるのではいけなかったのであろうか。
日本はかつてスポーツフィッシングの隆盛により、各地の湖沼、河川でブラックバスが放流されてしまった。琵琶湖は今やブラックバスやブルーギルの大生息地となり、既存の生き物が住処を追われている。
ブラックバスもブルーギルも特定外来生物であるため、駆除の対象にして再放流禁止の魚にはなるのだが、残念ながら食用の対象にはなかなかなっていない。
しかし、北米の家庭料理で使用される魚であることから、食べられるということについては間違いない。
恐らく日本に住み着いたブラックバスやブルーギルを根絶することは不可能であろう。ブラックバスに至っては天ぷら等で食べると美味い淡白な白身魚であるが、食卓に並べるような人は殆どいないのが現状であり、琵琶湖では日々「ただ捨てられる魚」となっている。
なお、令和3年時点で、オオクチバスとブルーギルの生息量は400トンあると推定されている。
もちろんコオロギ食そのものは否定しないが…
Twitterでは「コオロギは中国人も食べないほど体に悪い」などと言う放言が出回っているが、何のことは無い、調べて見れば中国人もコオロギは食べているし、昆虫食盛んなタイ王国でも勿論食べられている。
ただし、漢方の辞書では「微毒」と書かれていると言うのは確かである。
尤も、コオロギ食そのものを否定する気は毛頭なく、珍味として食べる分には良いだろう。
ただし、SDGsの一環としてコオロギを食べる分には違和感がある。
果たして、スーパーで売れ残って廃棄される生鮮食品や総菜が存在し、或いは駆除され、ただ廃棄されるだけのブラックバスがいる日本で、わざわざコオロギを生産して食べる理由は見当たらない。
そもそもコオロギを育成するためには餌となる穀物の生産も必要であり、食の持続性という点でも疑問は残る。
結局のところコオロギ食など珍味に過ぎず、本当にSDGsを考えるなら、東京一極集中に歯止めをかけ、就農を支援していく方が余程SDGsになるのではなかろうか。