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鉄オタが認識できない事実:100億円の新幹線車輛などアジアは求めていない🚄

顧客の成功を考えているのか

黒い特急かもめ

写真:特急かもめ号の車窓より

ITの世界ではこの数年で「カスタマーサクセス」という言葉が広まってきた。サブスクリプションの浸透に伴って意識されるようになった言葉であるが、顧客に継続して自社サービスを利用してもらうためには、自社のソリューションを使ってもらうことによって顧客のサービスをどう成功させるかと言う視点が必要になるということである。
交通インフラである鉄道の場合、IT業界と同じようなことを言えるわけではないが、一つだけ鉄道にもITにも共通して言えることがある。
それは顧客にとっては導入してからが本番であるということだ。
何を今さらと思うかもしれないが、非常に重要なことである。
インドネシアにとって新幹線が利益をもたらすかどうかは大事である。

新幹線は日本の強みにならない

新幹線は世界で初めて商用運行を実現した高速鉄道であり、新幹線にある種のナショナリズムを抱くのも無理のないことである。
確かにこれまで新幹線は大きな事故を起こすことなく、正確なダイヤで運行されてきた。車輛に使われる技術、運行を支えるスキルは実に高度なものである。
しかし、である。
日本国内においては輝かしい新幹線も、アジア輸出に於いて強みになるとは限らない。いや、むしろ足枷になっている可能性すらあり得る。
まず海外の人間にとって秒単位のダイヤで動くというのは無理ゲーなのだ。更に5列シートを使っているのも新幹線くらいだ。TGVもICEも3列と4列が基本である(日本で言うグリーン車相当が3列で普通車が4列)。更に言うと新幹線は標準軌と言って、レール幅(1435mm)は他の国の高速鉄道と差異は無いため、思った以上に差別化は難しいのである。加えて高速鉄道を作る技術というのは、どこの国も喉から手が出るほど欲しいものだ。技術盗用には細心の注意を払わねばならない。
JR東海の葛西敬之会長は川崎重工がE2系の技術を中国に提供したことを激怒したことで、東海道新幹線の車輛製造から川崎重工が外されるに至っているが、何も新幹線技術を欲したのは中国だけではない。台湾もインドネシアも高速鉄道製造技術を手にしたら、自国製の車輛を作るつもりでいたのだ。
アジアにおける鉄道事業では、むしろ在来線の方がよっぽど日本の強みと言って良い。
英国や日帝が占領していた地域では今も狭軌(1067mm)が重に使われており、インドネシアをはじめとしたアジア諸国で日本の中古車両が走っていたのも、そのためである。
日本一新幹線を造っている日本車輛製造は2018年にインドネシア向けの地下鉄車輛を納入しており、勿論これも狭軌だ。
狭軌のメリットとしては建設コストが安いというメリットがあり、大日本帝国が狭軌を導入したのもこのためと言われている。
今もアジアの途上国では狭軌が使われ続けている上、ジャカルタの地下鉄はまだ最近新設されたばかりの路線だ。日本の鉄道会社は実に狭軌で安全に走れる車輛を造れるということの方に強みがあると言って良い。

新幹線を海外展開したいならJR東海は降りるべし

「インドネシアは日本を裏切った」などと言う者にも呆れるものであるが、BtoBのビジネスには裏切りはつきものである。これが日本人同士でさえ裏切る時はアッサリ裏切るものだから、性悪説で動く外国の人間ともなれば合理的と思われる選択に逃げられても不思議ではない。
何しろ日本人同士のシステム開発案件すら、客が提案書をパクってコンペをかけるなどと言うことが、当たり前のように行われているのだ。日本人同士でさえこの体たらくなのである。
そう言えば台湾の失注後、コロナ禍にも関わらず日本企業連合がアポなしで台湾に行ったと日刊ゲンダイで報じられているが、やはり台湾高鐵とは物別れになったようである。
尤も、台湾側は2度コンペをかけて日本以外の応札は無かったということから、それほど競合他国にとってビジネスの旨味が無かったと言えるが、東海道新幹線の多忙度は世界的に見れば異常である。3-5分間隔で新幹線が動くのは紛れもなく東海道新幹線だけであり、今や東海道新幹線の車輛はN700Aを主力にN700Sが一部充当されると言った具合である。N700Aにしても「N700からA化されたもの」と「最初からN700Aとして開発されたもの」があるが、今は殆ど「最初からN700Aとして開発されたもの」しか見られない(ステッカーの貼り方が違うので非鉄オタでも容易に見分けがつく)。要は今の東海道新幹線区間は10年走っている選手がいないのだ。山陽新幹線や上越新幹線には20年選手がいるのとは偉い違いがある。
在来線車輛に比べると新幹線車輛は製造費が高く、かつ寿命が短い。それでも車輛を運用する側は出来るだけ長く使いたいものである。ただし、異常な繁忙度を誇る東海道新幹線は、どうしても車輛の更新が早くなってしまうのだ。
東海道新幹線の基準でものを考えると、どうしても車輛導入を考える他国の事情はわからなくなってしまう。台湾の車輛更新を巡るトラブルは、正に台湾のことが見えていなかったために双方が不幸になった取引と言えるだろう。
台湾とインドネシア、立て続けに失敗してきたが、失敗した理由など至って簡単で、相手の事情が見えていなかったというマーケティング不足から来るものである。さしずめ、本当に新幹線の海外展開をしたいのであれば、JR東海は降りた方が良いのではないか。もしJRが絡んでいきたいのであれば、東海ではなく、東か西で主体になって行った方が良いだろう。

アジア関係   2022/01/29   センチュリー・大橋
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