日本の新幹線は高すぎる
写真:新幹線のフリー写真素材より
「インドネシアが日本を裏切って中国に乗換えた」と言う鉄道オタクの発言を見るとゲンナリさせられるものである。
「日本を裏切って中国に乗換えたら痛い目見た」とか「日本に泣きついたみたいだが裏切った国なんかほっとけ」などと言うコメントを見ると「こりゃ日本はまた同じ失敗をやるな」と思わずにはおれまい。
2021年には台湾高速鉄道の車両更新にも日本の新幹線が使われないことが決定し、見切りをつけられることとなった。
なぜ台湾が日本の新幹線を使わなくなるのか。その理由はいたってシンプル。
「高すぎる」からである。
1編成100億円の新幹線など求めていない
もともと台湾新幹線というのは「700T(700系ベースの台湾新幹線車輛)はまだ走れるし、部品の提供をしてよ」というのが台湾側の要望だった。
これに対して「ウチじゃ700系はもう造ってないから買い替えてね」というのが日本側の言い分である。それで渋々新型車両を導入するための値段を訊いたら1編成100億円なのだと言われたわけだ。
海外の購入者が鉄オタ日本人と同等のリテラシーあると思うな
鉄道オタクは確かに車輛の性能や強みを良く知っていたりするし、車輛や日本国内における運用に関する知識なら一級品かもしれない。その知識を以てして「インドネシアは愚かな選択をした」とか「日本を裏切った」などと言うのは簡単である。それは高速鉄道に関するリテラシーがあるから言えるのであって、新幹線の導入を検討している国が鉄オタ日本人と同じリテラシーを持っているわけではない。
それは日本人鉄オタと同じリテラシーがあれば、さぞ判断を間違えることなく、何年後に黒字を出せるかという見通しも立てられるだろう。しかし、インドネシアは現在、日本のような鉄道大国ではないのだ。言ってしまえばインドネシア人にとって高速鉄道というのはわからないことだらけだ。
車輛を作る費用だけではない。線路や車輛の維持にどれだけのお金が発生するかと言ったこともイメージ出来ていないと考えた方が良い。
まして需要なんて全く見通せない。
参考までに新横浜ー新大阪の新幹線運賃は凡そ14,200円程度であり、インドネシア人の大卒20代の月収は30,000~50,000円程度である。日本人とは給与も全く違うのだ。
確かに日本のJR各社の主要収益源は新幹線路線だ。JR西と東海に至っては、半分近くが新幹線によって収益が齎されている。いや、東海はほぼ新幹線で高利益率を達成していると言って良い。
反面、海外に目を向ければTGVは赤字である。
仮に海外向けのN700Sを1編成80億円で造れるとして、だ。それでも発注国としては、投下資本を確実に回収できるかの不安は付きまとう。安い方に食いつきたくなるのは無理もないことである。