観光都市にも行けば人力車を見ることは少なからずあるだろう。
新型コロナ感染拡大に伴う鎖国、緊急事態宣言に伴う移動の自粛要請などで、すっかり需要が低減しているが、しかし人力車は文化の守り手として重要な存在である。
なんでも人力車の車体は180万円掛かるそうであるが、仕事としての人力車というのは、実に高度な技術を要する仕事と言えるだろう。
まず見ての通り体力が必要だ。基本的に2人乗せの車を押して走り、坂道の昇り降りをしなければならない。それだけで足に負担の掛かる作業であることはわかるだろう。だが、そもそも人を乗せるための過程が大変だ。まず人力車サービスを使ってもらうためには、キャッチをしなければならない。キャッチをしなければ、そもそも出発点に立てないのだ。
人力車の仕事とは体力と知識と話術の総合力
人力車という仕事が如何に高度な仕事か。これはサービス納品までの過程で行うことを見て見ると、どれだけの力のいる作業かが良くわかる。
❶潜在利用者を見分ける眼力
❷キャッチの際に見込み客と行うアイスブレイク
❸120Kgの重量を押しながらたくさんの距離や坂道を歩ける体力
❹街の歴史や行事についてガイドできる知識
❺乗客を退屈させないトーク力
➏所定の場所まで客を『安全に』送り届ける注意力
こうして並べて見ると、人力車の仕事が如何に高度な仕事か良くわかるのではないか。
上の❶~➏のどれかが欠けても人力車の仕事は成立しえないもので、これをITの仕事に置き換えるとこうなる。
①自分で見込み客リストを見分ける
②自分で商談に臨んで契約を取る
③自分が自ら要件定義・コーディングを実施する
④自分で保守運用まで実施する
こんな具合になり、営業・開発・保守運用と、実に幅広いことをソツなくこなすことになる。こうなると最早スーパーマンの類である。
己を知らず客をも知らずで万事危うき
人力車であれば、自分の働く街についての歴史を学び、どのような者が顧客になり得るかを見定めながら業務に当たっている。人力車が二人乗りであることからも、大まかに見ると2人組の旅行客に声を掛けることが多い。
ではIT営業はどうだ。必ずしもプログラミングやネットワークを知っている必要は無い。知っていなくても業務は出来てしまう。
「業務が出来るならそれで良いじゃないか。」
そう思われる人もいるかもしれない。そう、プログラムもサーバーもネットワークも、殆ど知識が無くても何故か業務は出来てしまう。ここが問題なのだ。
困ったことにSIerの営業は客に嘘を付くことが多々ある。日常茶飯事と言っても良いかもしれない。同じ会社の実務部隊がどんな働き方をしているかも知らずに契約を取った結果、プロジェクトが火を吹く、なんということも珍しくはない。
IT業界に入るなら、例え営業と言えど、一度はプログラミングやサーバー、ネットワークを少しは触れるできではなかろうか。ITの仕組みも知らず、同じ会社の実働部隊のことも知らないまま、契約だけは取ってくる。その結果、業務部隊からは顰蹙を買い、無茶な仕事を取っては炎上する。
このような仕事の在り方は改善が必要であるし、人力車の仕事のやり方を少しは見習った方が良いのではなかろうか。
「営業マンだから営業さえできればよい」
これでは案件が炎上するのは当たり前であるし、IT営業マンがプログラミングもインフラも経験せずに業務に就くと言うのは、もはや罪の領域である。