ところで東京五輪2020の開催を望んでいたのは、何も与党やその支持者だけではない。中国もまた、東京五輪の開催を願った者の一員である。
北京五輪2022が続く中国も当然、延期だの中止だのは避けたい。
その意味で、東京五輪2021の成功(本当に成功と言えるかはともかくとして)は中国にとって、北京五輪開催のための大義名分を得ることが出来たものである。
その意味で、東京五輪を開催した日本は、間接的に北京五輪開催のお墨付きを与えたようなものであった。
その矢先に中国テニス選手失踪事件が起こることになり、再びIOCバッハ会長は(開催に向けて)火消しに追われることとなったわけである。
五輪出場選手が人権侵害への抗議などを行うことは「政治的だ」として頑なに拒絶するくせに、バッハとIOCの幹部たちは非民主的なブラック政府とベッタリ癒着する「政治的態度」をとり、自分たちの金儲けに最大限利用する。
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) November 22, 2021
本当に醜い連中です、IOCの上層部にいる人間たちは。https://t.co/VTUZ6F6WpC
山崎雅弘氏や清水潔氏は東京五輪にも反対していたが、見ての通り北京五輪に関しても否定的である。
この時点で、つるの剛士の「東京五輪反対派は北京五輪にはダンマリ」というのは事実誤認であると言えよう。
パワハラと言う名の人権侵害
ここでようやく本題に入るが、東京五輪最大の汚点は「若き現場監督がパワハラによって命を絶ってしまったこと」である。
月200時間を超える残業、上司からの罵倒、心身共に病めた末に失踪する。
「身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」と遺言を残し、長野県で遺体が発見されるに至る。
2017年当時、23歳という若き命であった。
まだ未来ある若者が五輪の競技場建設を巡る人権侵害によって命を絶っているのである。
本来、五輪の理念に則るなら新国立競技場建設においても「誰一人犠牲者を出すことなく安全に工事を完了させる」ことが絶対的に必要である。それすらが達成できなかったのだ。
猪瀬直樹が当初ツイートした通りの「コンパクト五輪」になっていたら、恐らくこの若者も存命していたであろう。
この事件は産経新聞でさえも報道しており、五輪絡みの立派な人権侵害である。
自国民への人権侵害を許した日本は北京五輪を批判できないぞ
これは東京五輪2020に於ける最大の汚点である。
しかし、これだけの労働者に対する搾取があっても、多くの日本人は黙認したのだ。
労働者に対する人権侵害を放置して五輪強行開催をした日本が、何を以て中国の人権侵害を批判出来るというのか。
自国民への労働者に対する人権侵害を止められなかった日本は、中国に文句を言う前に自らを省みるべきである。
共産党一党独裁である中国(厳密には中国にも複数の政党があるが)は人権国家とは言い難いであろう。だが、新国立競技場建設に於いて違法な過重残業をさせていた建設会社は81社もあった。五輪を観戦していた日本人一人一人がそれを黙認してきたのだ。
そんな自国民に対する人権侵害を見て見ぬ振りをしてきた日本に、北京五輪を批判する資格はあるのか。少なくともそんな資格は日本に無いと思うぞ。