派遣会社に賠償命令は出たものの
写真:秩父市のフリー写真素材より
派遣するSEに対して、詐称した経歴を用いることが強要された問題で、当のSE派遣会社に対する賠償命令が行われた。
この賠償はSE派遣会社から元SEに対して行われる賠償であり、派遣会社が取引先に賠償を行うであるとか、有印私文書偽造罪に問われると言ったものではないが、IT業界の中では波紋を呼びそうな判決ではある。
本事件に関するネットの声としては「経歴詐称を行う悪徳派遣会社の名前を公表しろ」という声がよく見られるが、しかしSE派遣の世界では経歴詐称は当たり前のように行われた負の歴史がある。
とどのつまり、当の派遣会社の名前を公表したからどうこう言う問題ではなく、根本的に根深い問題が存在している。
なぜ取引先に経歴を詐称するのか
誰もが言うように、経歴詐称を行うことは良くないことであるが、ここで大事なことは「なぜスキルシート改竄が状態化したのか」ということである。
そもそも労働者の個人的な判断で行った経歴詐称ではなく、派遣会社の指示で詐称していると言ったことが問題だ。
派遣会社がスキルシート改竄を指示するということは、スキルシートの改竄をしなければならない事情があるということでもある。
勿論、事情があるからと言ってスキルシートを詐称して良いわけでは無い。
問題になるのはスキルシート詐称が行われる背景と必要性であり、報道からわかるのは、あくまで結果でしかないからだ。
派遣会社と元請けの契約方式には派遣契約と請負契約、準委任契約と言った形式があるが、共通していることとして「派遣先(発注者)が受注社の従業員と面接してはいけないこと」である。
そもそもであるが、もし受注者に属する労働者と発注者との間に面接が無かった場合、労働者側の経歴を改竄する理由は何も無いのだ。
派遣契約にしろ請負契約にしろ準委任契約でさえ、現場に行かせるエンジニアは受注者が選定する。
受注者は採用面接を通じて労働者の経歴を聴取しているのであるから、その経歴に添った現場にアサインをし、発注者にはPCのアカウントやICカードの有効化などをしてもらえば良いことである。
発注者にある権利は希望しない技術者が来た場合に、契約を打ち切る権利であって、労働者を選定する権利ではないのだ。
経歴詐称が行われる裏には派遣法違反が存在する
経歴詐称が行われる裏には派遣法違反がある。
一応、実際に業務にアサインされる前に受注者に属するエンジニアと発注者が打ち合わせ(面談)を行うことは合法だ。
ただし、この派遣法の裏を突いて「面接」を「面談」と言い換えたり「商談」と言い換えたりする「実質的な面接行為」があることが少なくない。
本来ならアサインするエンジニアは受注者側で選定するべきであるが、実際には発注者が選定しているということが起こっている。
なお、ITゼネコンは建設業とよく似ていると言われるが、建設業は発注先の職人と面接をするようなことはないので、そこは建設業とは異なる大きな相違だ。
IT産業は正に違法と誤魔化しで成り立っていると言って良い状態である。
辞めたいのに辞められない日本の仕組み
