写真:白山市のフリー写真素材(松任海浜公園)より
荒れる福祉業界
介護や保育などの福祉業界が荒れ放題だ。サービス提供の事業者に従事する者が利用者に対する暴力を振るってしまう事件が起きており、障がい者福祉の世界では相模原やまゆり園事件が大きな遺恨を遺す事件となった。
一方、保育の世界もまた荒れており、裾野市では園児を虐待する事件も起きている。
こうした事件を前にして、犯人を叩くのは容易である。犯人を叩き、厳罰を望み、正義に酔いしれる。大多数の｢正義の味方｣達は、己が正義に酔いしれはするのだが、それで終わりだ。世の中の歪は何も解消されていない。
最も、相模原やまゆり園事件の歪が全く解消されていない延長にこそ、裾野保育園児虐待事件が続いているのではなかろうか。
悪を断罪すれども根本は解決せず
裾野市の保育園児虐待事件に関し、ネットでは厳罰を望む声が高まっている。では加害者に厳罰を与えれば良いのかと言えば、ことはそう単純ではない。
保育園だけでなく、福祉業界全体で見ても、業界全体には大きな歪がある。
言うなれば加害者の逮捕や厳罰は単に風邪の症状を抑えただけに過ぎず、健康な身体作りをしなければ幾らでも再発する。
これは業界が変われど本質的な問題は変わらず、ITの世界ですら〖さぶれSMBCソースコード流出事件〗や〖ブロードリンク神奈川HDD転売事件〗が起きている。
さぶれSMBCソースコード流出事件やブロードリンク神奈川HDDは、IT業界の歪が露わになったものだ。
勤続20年で年収300万円のプログラマー、かたやブロードリンクは課長職に就いても年収400万円程度しかないようで、一般社員は年収300万円、みなし残業も含まれているそうだ。
これはIT業界の話と言え、福祉業界も決して他人事ではない。何せ相模原やまゆり事件がその象徴とも言える。
やはり福祉業界は全般的に賃金が安く、福祉に関わる人間の経済状況自体が貧しいのである。
たった3人の悪を断罪すれば解決するような問題ではない。
介護も保育も底辺職扱い…少なくとも賃金はそう語っている
夏には大炎上した新卒向けの就活サイトに、底辺職としてランキングされたものには、見事に介護と保育が入っていた。
大炎上したさいサイトであるが、一方で｢どこか世間がそう思っている｣を可視化させたからこそ炎上したのではなかろうか。
｢みんな言わないだけで内心はそう思っていた｣というところが、かの炎上事件の要因ではないかと思われる。一方で、看護師は底辺職として扱われることはなかった。
唐突に引き合いに出した看護師であるが、介護職と看護職は大きな共通点が3つある。
1つ目は人々の健康に寄与する仕事であるということ。
2つ目は人の世話をする仕事であるということ。
3つ目は肉体労働と感情労働のミックスであるということ。
人の命を預かり、人の世話をするという点においては、保育士にも当てはまる。
しかし、看護師はある程度憧れの職業になる反面、介護はキャリアの墓場というのが現状だ。その要因にはやはり年収の壁が大きく存在している。
アラフォー看護師の平均年収は約490万円。夜勤もあるとは言え、それなりには貰えているため、介護や保育の仕事とは大きく異なる状況に置かれているわけである。
資本主義社会では年収の力は絶大だ。
多くの人は綺麗事としては｢人の価値=年収では無い｣と言うだろう。だが、それを許さぬのが資本主義。資本主義では人間としての価値は｢いくら稼げるか｣が重要になる。それが故に、キツイ割に給料が安く、休暇も取れない介護や保育の仕事は、社会に無くてはならぬ仕事に関わらず｢3K｣の仕事扱いされるのだ。