人柄重視採用という罠
写真:大阪港のフリー写真素材より
日本企業は外資系の企業と比較すると、スキルマッチングをあまり行っていない企業が多い。
求人広告では「人柄重視」という文言は多く見られ、多くの企業が応募者に真っ先に求める能力が「コミュニケーション能力」である。
良いか悪いかは別として、コミュニケーション能力がアピールできれば、スペシャリティスキルは低くても採用されることは良くあることである。
人柄重視で採用すること自体は若い世代にとっては「チャンスがある」という面で良いことではあるのだが、その一方で「人柄重視で採用したはずなのに入社してみたらモンスターだった」ということも少なからずある。
この「人柄重視」採用は面接に寄って応募者の人柄を判断しようというものであるが、ここに採用担当者も気付かない落とし穴がある。
面接でコミュニケーション能力は見れない
恐らく「人柄重視」で採用したい人事担当者の多くは、面接によって人柄を見たいと考えている。
ところが面接で入ってくるコミュニケーション能力は極めて断片的なものでしかない。
この面接で入る情報が極めて断片的であるという事が、実際に入社させたらモンスター社員だったという事態に繋がるのだ。
いや、ある意味で「コミュニケーション能力がある人材が欲しい」と言う要望は叶っているのかも知れない。
モンスター社員は寧ろコミュニケーション能力はある方であろう。
それは社員と協調するためのコミュニケーション能力ではなく、相手の足元を見るコミュニケーション能力である。
相手の足元を見るスキルはある程度相手の顔色、組織における自分の立ち位置と空気、自分の実力を把握していなければできないことである。
そう言う意味で、モンスター社員は「ある意味」でコミュニケーション能力は高いのだ。
しかし、それで「コミュニケーション能力が高くて良かったですね!!」とはならないのだ。
面接で見れるのは「質疑応答力」でしかない
面接で人柄を重視しているはずなのにアンマッチをするのは何故なのか。
それは面接で見れるのはコミュニケーションスキルの中でも「質疑応答力」でしかないからである。
面接というのは大抵は面接官が1〜4人に対し、応募者は1人という形式で進む。
新卒採用ならいざ知らず、応募者同士のスケジュールが合わない中途採用で集団面接が行われるケースは殆どない。
即ち、面接官が何人いようがシングルタスク•コミュニケーションでしかなく、訊かれたら答える、1訊かれたら2で返すと言った質疑応答でしかない。
「コミュニケーション能力のある人が欲しい」と思っていても、実際には質疑応答力しか見れていないために、人柄は全く見抜けないのである。
「面接官の人数を増やせばマズイ人を取るリスクは下がる」と考えるかも知れない。
だが面接官の人数を増やしたところで、せいぜい応募者にプレッシャーを与えられる程度のものであり、面接官を100人に増やそうが1000人に増やそうが、目の前にいる応募者は1人しかいない。
そのため、応募者がやることは極めて単純である。
一問一答する、必要に応じて一問二答するだけである。
それ即ち、面接でわかるコミュニケーションスキルは「質疑応答力でしかない」のである。