国際正義の履行は国民の生活よりも優先させねばならないことなのか⓵
電気代が6倍に
写真:長崎市のフリー写真素材より
英国市民が悲鳴に喘いでいる。
露宇紛争によってロシアに経済制裁を課したブリテンだが、ここへ来て電気代が6倍になったというのだ。
プレジデントオンライン:電気代が9000円→5万6000円に…英国市民を直撃する「ロシア制裁」の大きすぎる代償より
ロシアは産油国にして資源国であり、食料を輸出している生産大国である。何が恐ろしいかと言うと、例えば都会のオジサンがお世話になっている駅ソバのソバ。あのソバすらロシアに一定の依存をしているというのが悲しい実態なのである。
「正義」で同じ方向を向く人達
露宇戦争が始まった時点から付きまとってきた問題が「正義は生活より大事なのか」ということである。
戦争の悲惨さが語られることはよくあるが、それは起きた結果の悲惨さであって、どのように戦争が起こるのかというプロセス論的な見地から戦争が語られることは少ない。
露宇戦争にしても多くの人は「プーチンが戦争を起こした」という結果だけを見て「プーチンが乱心した」と判断し、或いは「プーチンは異常者である」と言う評価を下している。現実には遡ると2014年には露宇戦争の種子は撒かれ、或いは苗は植えられていたと言えるだろう。
少なくともプーチンは以前から欧米を仮想敵として設定しており、露宇戦争は少なくとも2014年からデザインされていたと考えることはできる。
今回の戦争で引っかかるのは報道戦の在り様だ。我々日本にいる人間の元には「西側視点」のニュースしか入らない。そして今回のサブテーマとして「正義」というものが関わっている。
云わば「ロシアという巨大な悪をどう倒すか」という視点での戦争論なっているということである。
安倍政権時代には右と左に分かれて対立していた陣営は、今も互いの仲は悪いことこそ変わらないが、一方で「ロシアという巨悪を倒そう」という方向性は一致している。いわんや、ロシアに関するツイートだけを見て、それが右派か左派かを見分けるのが非常に難しいということであった。
正義は暮らしに優先すべきものなのか
少なくとも私は英国の電気代が6倍に跳ね上がる事態は想定外であった。むしろ今回の戦争で英国は高みの見物で利益を得られる立場であろうと踏んでいたのだ。
この見立ては完全に甘いものとなった。
英国はウクライナ難民について、通常の移民と同じプロセスで入国審査を受けろと言っていたが、それは何を隠そう、英国民自身が経済難民化してきているからである。
ここで「正義は生活にも優先して行使しなければならないのか」ということである。
もちろん電気代6倍というのは新電力で試算した時の価格だ。だが、小麦粉は2倍の価格になり、或いはパニックによる買い占めで店から姿を消し、人々の生活は壊れてしまったのである。失業者もゾロゾロと出てきているだろう。
どうやら英国では「ウクライナが戦ってるのに自分達が楽してて良いのか」的な、自粛ムードがあるようである。東日本大震災後の日本にも自粛ムードがあったが、やはり遠くの国たる英国人がそれを知る由も無かったのだろう。我々とて、英国に移った日本人ライターによる実生活レポートが無ければ、英国の現状を知ることは出来なかったのだから。
だが、正義を通そうとすれば通そうとするほど、自国民からすら生活に悩む者が出てきてしまうのが今の現状かと思われるが、如何か。