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N700Sに拘り続けた大失敗:台湾の失注は起きるべくして起きた🚄

700系ひかりレールスター

1編成186億円。現地メディアでそう報道されたのは、台湾向けに売り込んでいたN700Sの値段である。
台湾高鉄の関係者によれば入札価格は8編成で233億台湾ドルであったとのことだが、いずれにしても日本国内を走るN700Sよりも遥かに高い値段で売ろうとした。
台湾の足元を見るような日本側に台湾高鉄は不信感を募らせたようだ。
Youtube動画では「インドネシアに続いて台湾にも逆上された」などという動画が配信されていたが、果たして根本的な問題を考えずに「台湾に逆上された」などと言うのはいかがなものか。
N700は日本国内だけを見れば自信作かもしれないが、国際舞台で展開しようとするなら、寧ろ失敗作なのではないか。
そもそも新幹線を世界に羽ばたかせるのにおいて、JR東海に関わらせて良いものなのかすら疑問が残る。
新幹線が世界に羽ばたくのにおいて、最も障害となっているもの、それはN700とJR東海自身なのではなかろうか。

フル規格新幹線に固執しすぎる愚

日本国内ですら現在、長崎新幹線を巡って佐賀県と国が揉めている最中である。
国としては何としてもフル規格新幹線を通したい。一方、佐賀県側は新幹線を通すことそのものを拒んでいる。整備新幹線法に基いたフル規格新幹線の開通がなされた場合、並行在来線が第三セクター化されるためだ。
第三セクター化されることにより、運賃が上がり、地元住民の利便性が損なわれるためだ。
元々、佐賀県と国の合意は「スーパー特急方式」というものでの合意だ。
日本の鉄道のレール幅は2種類あり、在来線は狭軌という狭いレール幅で、新幹線は標準軌というレール幅が設定されている。
山形新幹線や秋田新幹線は「ミニ新幹線」と言われていて、これは新幹線車輛が新幹線専用線から在来線に降りて走行するのだが、これに合わせて奥羽本線を走る在来線車輛は車輛の台車を標準機のものへ交換する、三線軌条にして在来線車輛と新幹線車輛の両方を走れるようにするなどと言ったことで対応した。
ただ、スーパー特急方式はこうしたものではなく、どちらかと言えばかつて北越急行で走っていた特急はくたか号の方がスーパー特急のイメージに近い。
既存のレールを生かす、改良するなどして高速化を図っていくものだ。繰り返すと、佐賀県が当初承諾していた方式はスーパー特急方式であって、新幹線方式ではない。
なお、ドイツでもフル規格新幹線に相当する高速新線の建設は進んでいるが、並行在来線は引き続き国鉄が管理し、一定のサービスは維持される。佐賀県が了承した当初の合意では、並行在来線問題そのものが無いも同然な状態で合意しているのだが、せめてフル規格新幹線を通すなら並行在来線の利便性も考えなければならないのだが。どうにも「フル規格新幹線を通すことだけ」しか国は考えていないように思われる。

東京ー名古屋で15年間に200億円稼げるか

さて、台湾新幹線の話に戻そう。
台湾新幹線は現地報道ではN700Sベースを1編成186臆円で売りつけられたということになっている。
実際には1編成で100億円が正しい数字であったとしても、国内向けのN700Sと比べて高すぎることに変わりはない。
だが、根本的な問題として「台湾でN700Sベースの車輛が必要なのか」という問題にぶち当たる。
そもそも台北ー高雄間の距離は約355Kmしかない。日本で言えば、東京ー名古屋間の距離で、ほぼ国土の端から端まで行けてしまうという環境にある。台湾からすれば「現行の700Tで充分」なのだ。
だから台湾側の要望としては「700Tがまだ走れるんだから700Tの部品頂戴よ」ということになる。新車購入なんて初めからしたくなかったのだ。
ところが日本側の言い訳として「700系(700Tのベース車両)のパーツもう無くなっちゃったんだよね。だから新車買ってね。」ということである。
その日本では山陽新幹線で700系ひかりレールスターが走っているので、傍から見れば整備する技術自体は残っているはずである。それなのに「新車買えとはどういうことだ!」と言いたくもなるだろう。
その新車、現地で『1編成186億円』などと報道されれば「台湾に新幹線なんか要らない!」という世論だって起きようもの。
現在の新幹線は車両の寿命が15年程度しかない。1編成200億円を東京ー名古屋間の走行で15年かけて取り戻すことができるだろうか?
厳しいということは想像できるのではないだろうか。
繰り返すと、台湾にN700Sが必要であったのか。ここからして既に色々と間違いがあったのではないか。
東京ー名古屋程度の距離を往復するのにN700Sを押し売る必要性が感じられない。台湾の鉄道網は網目状ではないようなので、E3系やE6系のような在来線に車輛がベストでは無さそうであるが、製造費用を考えればE7/W7系ベースで良かったのではないか(製造費用は120両で328億円)?
E7系とN700Sでは1両辺りの価格が1億円近く差がある上、E7系ならパーツを供給できるのだから、保守性にも問題はない。北陸新幹線を延伸するならE7/W7系の製造は当面続くであろうから、台湾にもそれなりの価格で提示できたであろう。尤も、中国への新幹線輸出を巡って、川崎重工はJR東海の葛西敬之の逆鱗に触れたこともあり、葛西の意向としては川崎重工は入れたくなかったのかもしれない。
ともあれ、台湾新幹線の失注は起きるべくして起きたものであり、日本の新幹線史に影を落とす事態とも言えるだろう。

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ジャーナリズム   2021/02/06   センチュリー・大橋
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