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「自分で考えろ」と「勝手なことするな」の境界はどこにあるのか⓶

勝手なことするなで委縮

写真:佐久島のフリー写真素材より

どんな上司も自ら主体的に考えて「自分の望む通りに動く」部下がいるのが理想だろう。
だが「自ら主体的」に「自分の望む通り」に動く部下というのは、いそうでいないものである。
勿論「それができる」人もいる。

その一方で「主体的」の具体的な中身が分からないまま「主体的(という名の自分本位)」でやった結果「勝手なことをするな」と言われるようになる。
こう言われた部下は大抵委縮し、次回から正に「勝手なことをしないようにする(指示待ち)」へと変貌する。
極端と言えば極端だが、あり得ないわけではない。

自分で考えて欲しいことを可視化させる

「自分で考えろ」と「勝手なことをするな」には境界線がある。
大きな組織になればなるほど、職位事の裁量の幅というのは限られるため、必然的に「自分で考えるべきこと」の範囲と「自分がやって良いこと」の範囲は小さな組織に比べれば限定される。

極論から言えば1人しかいない会社は社長の好き勝手に判断して実行できるし、10人いる組織では大抵が役割分担をするから、1人の持つ裁量(権限)というのは知れている。
そういう意味では「何を考えて欲しいか」というのは可視化させた方が良いし、逆に「不必要なことは考えさせない」というのも大事なところだ。

例えば末端の一般社員に経営者視点で物を考えてもらう必要性は全くなく、職場でチームを円滑に運営するためにできることを考えて欲しいはずである。
そのチームの運営・改善に必要なことを考えさせるのであって、その内容については可視化させることが肝要だ。

品質管理活動の一環にはQCサークルというものがあるが、QCサークル活動をマトモにやっている企業は少ない。
そもそもQCサークル活動を全くやっていない企業も多く、QC活動を行っていないために各々の職能や職権も良くわからないことも多いのではなかろうか。

品質管理活動として基本的な活動であるQCサークルの中で、各々の従事者にはどんな職権があり、どんな役割があるかを可視化させるというのもまた、重要な行動なのではなかろうか。

いっそ「自分で考えなければならない」を少なくするのも手である

「自分で考えろ」と「勝手なことをするな」には境界線がある。
その境界線を見える化することが肝要であるが、同時に「自分で考えるべきこと」を少なくするというのも、業務効率化に於いては重要であったりする。
いわゆる日常業務の中に於いて「自分で考える必要がある」作業は新規事業創出、新規顧客獲得、既存業務改善活動やイレギュラー対応など、多岐に渡っているように見えて限られている。

通常の業務については「自分で考えさせない」ことが効率化には重要であり、生産性を上げるなら業務標準化を行うことだ。
だいたいからして「自分で考えなければならない領域が多い」時点で生産性が良いとは言えない。

大事なことは「標準化できる作業を標準化して自分で考えなければならない領域を減らす」こと。
そして「自分で考えて欲しい部分は見える化する」こと。
この2つができるようになると組織は円滑に回りやすくなるのではなかろうか。

「自分で考えろ」と「勝手なことをするな」を巡る困惑は、業務の見える化や標準化をしていくことで、解決に近付くことができるのではないかと考える次第である。

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就労形態   2023/12/15   センチュリー・大橋

「自分で考えろ」と「勝手なことするな」の境界はどこにあるのか⓵

言わないとわからない

写真:佐久島のフリー写真素材より

仕事を進める上で判断に迷うことはよくある者だが、日々の業務において難しいことの1つが「自分の裁量を正確に把握すること」である。
言うなれば「空気を読めるかどうか」が求められ、コレができるか出来ないかが出世にあたっても大事なポイントになるのだが、残念ながら世の中には「言わないとわからない」人達も一定数いる。

極論的な例えを持ち出すとASDなど「言われないとわからない」の典型だ。
このASDの割合にしても概ね学年の2~3クラスに1人はいるような割合で、ともすれば「貴方の部下にもASDが居るかも知れませんぜ」という頻度でいたりもする。
こうした人も上手く従えないといけないのが管理職の大変さではあるのだが、同時に労働者の大変さでもある。

取り分け日本はハイコンテクストの文化だ。
ハイコンテクストであるが故に「それくらい言わんでもわかるやろ」という先回り能力が求められるのだ。

「自分で考えろ」⇒無能な働き者に変貌

指示待ち人間の部下に『自分で考えろ』と叱責したら、報告せず勝手に行動する無能な働き者に変貌して手が付けられないのですが、もう鉄拳制裁しかありませんか?

なかなか過激な物言いだが「自分で考えろ」の意味が正しく伝わらなかった典型である。
もちろん鉄拳制裁などしようものなら暴行罪で科料となるか告訴されるかと言ったところになるが、迂闊に「自分で考えろ」と言ったばかりに「自分で考えて行動してしまった」ということである。

「自分で考えろ」と言いながら「自分で考えて行動した結果」が「勝手なことをするな」であるから、自分で考えることと行動することには境界線があることになる。
要は「どんな方法でやりたいかを自分で考えて、そのやり方で進めてよいかを相談して欲しい」と言えば良いことなのだが、訊き方として「どうすれば良いですか?」の疑問を「そんなの自分で考えろ」と言ったばかりに「自分で考えて勝手に行動される」ということが起こる。

ここで大事なことは2点ある。
・質問の仕方を指導する
・自分で方法を考えて相談させる
この2つが必要なのである。

例えば炒飯の作り方を知りたいとして「炒飯はどう作れば良いですか?」と訊かれ「そんなの自分で考えろ」と言ったとしよう。
自分で考えた結果、醤油を大量に入れて炒飯の色を再現しようとし、結果、すこぶるしょっぱい炒飯のような見た目のものが出来上がる。
そのようなご飯炒めを作らせないためには「炒飯の作り方を調べて自分で考えて貰って正誤について相談させる」ということが必要なのだ。

「自分で考えろ」だけでは部下(後輩)には伝わらない

ここまで読まれると「そこまで言わないと伝わらないのか」と思われるかもしれない。
しかし、世の中には「それが伝わらない人間がいる」のである。
極論を言えばASD当事者には高確率で伝わらない。
このASDにしても、小中学校の2クラスに1人の確率で存在するのである。
これを多いと見るか少ないと見るかは個々人で差があるであろうが、それ以外にも外国人の部下を持ったりすれば、やはり言葉に不足があると伝わらないのだ。

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就労形態   2023/12/14   センチュリー・大橋

事務職に転職するならIT業界でスキル身に着けておいては如何か⓶

IT業界で経験を積む選択

写真:神崎川のフリー写真素材より

事務職と言うのは今や1つの求人に対して300人の応募がある世界である。
いくら少子化で売り手市場だなどと言っても、人手が不足している仕事は基本的にブルーカラーの仕事か営業職、そしてIT職である。
事務職は総じて採用は圧縮傾向にあり、価値を生まない仕事は外出しされるか、非正規として雇用されるかのどちらかだ。

となれば、価値を生み出せる事務職として戦っていく他ない。
この際「事務職を諦める」のが一番確実で安定した生活が得られると思われるが、それでも事務職を目指したい人には、1つの処方箋を与えたい。
それがIT職で経験を積むという選択である。

情シス(社内SE)も出来る事務になるしかない

今後も一般職として事務の求人が伸びることはない。
寧ろChatGPTや自動化ツールの発展に伴い、ますます縮小していくと見るのが妥当である。
SESの案件でも客先常駐SEの業務の一環に一般事務作業が含まれていることがあり、少なくとも一般事務しかできないようでは、この先の時代を生き抜くことは極めて困難となるだろう。

となると、事務職になる前に「事務職でも活かせるスキルを他の職種で修行してくる」しかないのだ。
そこでお勧めできる仕事となると、やはりIT業界ということになるだろう。
IT業界では中途から入る場合、SESが登竜門になるが、ここで進路はインフラかプログラミングかの2つがある。
中年世代ならインフラから入るのが無難だが、全体的に人材が不足しているのはプログラマーの方なので、若ければプログラムを選択する方が、後々応用は利く。

例えばExcelマクロも立派なテキストプログラミングであり、プログラミングのスキルを身に着けておくと、転職後もWEB開発やマクロ開発など、活かせるスキルは身に付くだろう(但し企業に対してはマクロやRPAでの業務効率化はあまりお勧めしない)。

また、プログラマーは大抵インフラ周りにも知識があるケースが殆どだ。
そう言った意味では、プログラマーコースを選ぶことで、幅広いスキルを得ることが可能である。
こうしてITスキルを身に着けて「社内SEができる事務職」にならないと、事務職の転職では他候補者との差別化ができず、仮に採用されても後に駆逐される要因となってしまう。
尤も、IT業界も最近は柔軟な働き方が可能となってきているため、収入落としてまで事務職に転職する価値があるかはわからないが…。

価値を生めない事務職は現職にしがみ付く以外に選択肢がない

残念ながら価値を創造できない事務職は、今後は滅びるのみである。
少なくとも現職にしがみ付くしかなくなるであろうし、尤も、それすらがいつまで持つかもわからない。
事務職の正社員求人自体が縮小するし、よくてITへの理解度が低い零細企業が受け皿になる程度である。
だからこそ、しっかり価値を生み出せる事務職へと変貌していかなければならない。

そしてIT業界は今は門戸が広いし、他の業界に比べて金も良い。
IT業界でITスキルを身に着けた上で事務職に転職しても遅くは無いし、逆に一旦収入を手にした後で引き続きIT業界にいるか、金が下がっても事務職に転職したいかを選ぶことも出来よう。

そもそも転職市場では募集要件を満たすだけでなく、プラスアルファの部分で勝負をした方が良い。
慢性的な人手不足の職種ならいざ知らず、慢性的な人手充足の職種なら尚のことプラスアルファが無いと土俵にさえ立てない。
それでも「あくまで事務がやりたい」というなら、残念だが止めはしない。但し、それは運だけに任せた人生選択であるということは、肝に銘じておいた方が良いだろう。

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職業選択   2023/11/15   センチュリー・大橋

事務職に転職するならIT業界でスキル身に着けておいては如何か⓵

好景気でも難関職

写真:神崎川のフリー写真素材より

事務職と言うのはいつの時代も人気の的だ。
格別に給料が高くもなく(寧ろ安い)仕事にも関わらず事務職の人気は止まらない。
給料が安くても人気と言うべきか、人気だから安くても応募が集まると言うべきかはわからないが、ともあれ事務職は一貫して人気の仕事であることは間違いない。

有効求人倍率においても事務職の倍率が1.0を上回るということはまずなく、1つの席を目掛けて多数のライバルが闘い合っている。

内定取るのは運ゲーム

だいたいの事務職はそこまでスキルを求められないことが多い。
尤も、それに見合って給料は安いし、WordとExcelさえできれば他の能力は問われないことも珍しくない。
そして今やWordやExcelは事務職に限らず、営業職でも求められるスキルとなった。

では応募が多く、スキルも求められない事務職の場合、どうやったら採用を取れるのか。
答えは運である。
採用を勝ち取るのに必要なステータスは運、それのみだ。場合によっては容姿も加わるかもしれない。
残念ながら通常の選考に於いて他候補者と差別化するためのスキルは、せいぜいオジサン好みの容姿をしているかどうかくらいしか、差別化出来る要因もないのである。

少しずつAIや自動化ツールに取って代わられるようになる

恐らくDXが功を奏した場合、いわゆる事務職の仕事はほぼなくなっていくだろう。
例えばChatChatGPT。今やプログラミングやイラストまでやってくれるようになっているのだから、一般事務の行っている作業とうのはかなり自動化の余地が残されているだろう。
また、事務仕事については外注化も進んでいるため、ますます社内に残らない業務になっていくのである。
もちろんAIも完璧ではない。試しに人物のイラストを描かせると指が6本になったり脚が3本になるなどの、心霊写真を作ってくれてしまうことも多々ある。
だが、80%程度の完成度を安定して供給できることがAIの強いメリットとして作用しており、残りの2割を人でカバーすると言うことができる。

AIは定型処理を得意とするが、いわゆる定型処理がメインの事務になると、これはAIが取って代わるようになるだろう。
そうした観点から、いわゆる定型処理しかできないスキルの無い事務仕事というのは、ゆくゆくAIをはじめとしたITシステムが取って代わるようになる。
事務しかできない状態で40代を迎えようものなら転職先もなくなり、お先は真っ暗である。

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職業選択   2023/11/03   センチュリー・大橋

「辞めれば良いのに辞めれない」のは仕組みの問題でもある⓶

退職の自由を奪う仕組み

写真:内灘町のフリー写真素材より

何故労働者は精神的に追い詰められても辞められないのか。
会社を辞めずに人生を辞めてしまうのか。
これは一重に辞めたくても辞められない仕組みがあるというところに尽きる。

退職の自由を奪う仕組みには大きく分けて3つある。

⓵年齢帯による役割の変化
⓶身元保証人制度
⓷雇用保険

上記の⓵については、転職の35歳定年説は緩和されてきたものの、やはり39歳と40歳ではまた印象が変わって来る。
年齢が高くなればなるほどリーダー経験が求められるのだが、基本的にリーダーになれるのは5~10人に1人程度。
リーダーになれなかった者は、実質的に転職の自由は制限されることとなる。

身元保証人を立てられず…

転職の自由を奪う最大の要因が身元保証人制度であろう。
身元保証人とは分かりやすく言えば「お前が会社に悪さしたら保証人どうなるかわかってんだろうな?」と脅すために必要な存在である。
謂わば人質のことであり、多くの労働者は会社に就職するためには身内を売り飛ばさなければならない。

正社員として働く場合は大抵1人は身元保証人を取られ、金融業界などの煩い業界では親族1人、世帯を別にする安定した収入のある人間1人の計2人求められることが多い。
こうして「就職のために人質になってもらうことをお願いするシステム」があるため、簡単には労働者は会社を辞められないのだ。

そして身元保証人制度は転居の自由を奪うという指摘もある。
何せ転職する時にはまた頭を下げに行かねばならないのだ。
それだけでも気が重くなるし、こうして辞められない人が心を病める仕組みになっている。

自己都合退職は(最低)3ヶ月は無収入になる

そして最後は失業給付だが、これは自己都合退職の時に3か月間、無収入になってしまうことが転職を厳しくする要因だ。
日本の終身雇用は崩壊したと言われているが、実は崩壊していない。
多くの企業ではメンバーシップ型雇用をしていおり、かつ解雇規制の厳しい日本の法律も相まってか、なかなか企業は解雇をしたがらない。
辞めて欲しい人間には何とか自己都合退職に追い込もうとするが、間違っても自己都合退職をしてしまうと3ヶ月無収入に追い込まれる。

そのため、日本の転職活動は在職中に行うのがベストとされている。
だが、在職中の転職活動というのは思ったほど上手くは行かない。
今の環境から逃げ出すことが優先事項になってしまい、ありたいキャリアの姿をじっくり考える時間がない。
しかも転職活動をしている最中にも現在進行形で精神は追い込まれていくのであるから始末に負えない。

もちろん国家には財源というものがある。無制限に給付できる金があるわけでは無いが、しかし転職活動くらいはじっくり自分を見つめ直す時間が欲しいところである。
だいたい在職中の転職活動には有給休暇の残日数との戦いだ。そもそも余裕などない状態なのである。

そうして考えて見ても、日本は精神を追い詰め、病めて会社より先に人生を辞めてしまう人を出すくらいなら、せめて失業給付と身元保証人制度だけでも改革をすれば、今よりずっとマシな国になるのではなかろうか。

少子化はカネの問題から先に始まったのではない

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職業選択   2023/10/31   センチュリー・大橋

「辞めれば良いのに辞めれない」のは仕組みの問題でもある⓵

経験年数に3年・5年・10年の法則はある

どんな会社に入っても合うか合わないかは働いてみないと分からない。
同じ職種内の転職であっても商材が変われば仕事のスタイルは大きく変わるし、前職までのやり方が全く通用しないこともある。
正にその職場が合うか合わないかは働いてみてのお楽しみであり、働いて一定期間するとようやく「合わなかった」が分かるものである。

もちろん合う合わないの判断をするのは、新卒か否かや現在の年齢によって、早いか遅いかは「まだちょっと早いんじゃないの?」と言いたくなるものはある。
だいたい転職にあたって経験年数は3年、5年、10年が1つのフレームワークとなっており、だいたい1つの仕事で最低3年は続けた方が良いことは多い。
ただし、これには勿論例外は存在する。
極論だが会社が倒産してしまえば経験年数3年未満で退職というのも有り得るし、精神を病んで身体愁訴を訴えだしたら辞めるべきサインである。
もちろん休職して復帰後に別部署に異動するのも手であるが、新卒総合職と異なり、転職組は職種と配属の固定性が高くなるため、休職を明けても同じ部署になってしまうことが多い。
結果、再び症状は悪化して退職に追い込まれることになってしまう。

辞めれずに追い詰められる人達

適応障害や身体愁訴が起こる場合、必要なことは速やかな休職、そして転職活動だ。
大企業ならいざ知らず、中小企業ではあまり人事の異動も起きないため、休職明けも同じ部署に配属されることは多い。
休職から明けたところでストレッサーは変わらないのであるから、結局のところ会社を辞めることが最善となる。

ところが、最悪のケースでは会社を辞めるどころか人生を辞めてしまうことは多い。
特に40~50代が病めて人生を辞めてしまう危険ゾーンで、日経新聞の記事からも明らかとなっている。
この年齢帯は管理職に就いているボリュームゾーンであり、仮に会社を辞めるとしても引継ぎには時間が掛かるため、簡単には辞められない状態にある。
尤も管理職と言っても裁量の大きいエグゼクティブとは異なり、中間管理職の多くは定時が存在するし、裁量もそこまで大きくないのに残業代が出ないという、奇異な立場におかれている。
これもまた、精神的に追い詰められる要因となるだろう。

当たり前に行われるサービス残業:違法なのに断れない

全ての企業というわけではないが、サービス残業も横行しており、特に正社員で多く見られる。
新国立競技場を巡る工事で若くして亡くなった現場監督がいたが、その残業時間が200時間を超えており、しかも会社が把握していなかったというのだから、サービス残業が常態化していたことは想像に難くない。

建設業の人手不足とは言うが、無駄に仕事を増やして過労で亡くなる人間が出てくるのだから、それは志望する人が少ないのは当然である(そもそも今の日本は建設過剰である)
これはIT業界でも顕著で、コロナ禍によって在宅勤務が拡大したことが良いことのように見えるが、実は持ち帰り残業も増えている。
こうした持ち帰り残業が無法状態で行われており、これもまた立派なサービス残業である。

サービス残業は違法であるということはわかっているのに何故なくならないのか。
そのキーワードの1つが「共同体」と言えよう。

林千勝はデービッド・アトキンソンに対する批判の中で次のようなことを言っていた。

彼らグローバリストと我々の何が違うかというと
「共同体」だと思う。
つまり、私の喜びはあなたの喜びであり、私の苦しみはあなたの苦しみだし、あなたの苦しみは私の苦しみですという共同体が昔の日本にはあったと。
今もあるけれど昔はもっと強固だったわけ。
家も地域、村落も、会社もそうだった。国もそうだったわけです。陛下の元でね。
それをグローバリズムは、全部バラバラに壊そうとしているわけ。壊した形で儲けようとしている。
我々守らないといけないのはその「共同体」ですよ。

「私の喜びはあなたの喜び、私の苦しみはあなたの苦しみ」
これは「みんなまだ仕事してるのに…」というサービス残業を生み出す「共同体」の考え方に近い。
法治国家というのは契約社会であるが、日本では契約より空気が優先される、正に空治国家なのだ。
そして空気を読むのに疲れた人から病んでいくのである。

少子化はカネの問題から先に始まったのではない

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職業選択   2023/06/12   センチュリー・大橋

中高生時代に勉強に打ち込ませることが必ずしも良いとは言えない⓶

残念ながら就職は「運」で決まる

金沢市のフリー写真素材より

大学受験までは得てして実力だけで戦える。学力(テストの点数)という数値のみで判断されるからだ。
ところが就職は違うのである。
就職と受験の大きな違いは相手の有無だ。就職にも筆記試験がある企業はあるが、実力だけで戦えるのは筆記試験のみ。その先の面接は「運」で決まるのである。

もちろん就職の対策の為に面接練習をする学生は多いだろう。しかし、どんなに完璧な志望動機を作った(つもりである)としても良い資格を持っていたとしてもサークルなどで実績を出していたとしても、最後は運で決まる。現場の人(一次面接)に気に入られ、二次面接で「決裁者と合わせても大丈夫」とお墨付きを貰い、役員(最終面接)に気に入られるかは、その時になってみなければわからぬのである。
そうして「良い会社」の内定を貰えるのは、良い大学に入った人間の、ほんの一握りの世界である。

勉強が嫌いになるリスク

さて、残念ながら勉強して苦労して良い大学に入り、就職戦線で勝ち抜いて良い会社に入ったとしても、その仕事が合うかどうかすらがまた、やってみないと分からないというものである。まして電通(良い会社と言えるかわからないが)や三菱電機(良い会社と言えるか怪しいが)のような企業に入り、心身ともにすり減らし、再起不能になることもまた、ある。

もっと言えば、どんな企業に入ったとしても、就職しだしたあともまた、勉強が必要だ。
最後に頭が良かったのは22歳で止まる人は、ゆくゆくリストラ対象となる。何せ変化の激しい現代においては、正解のない課題や問題に対処し、専門性を磨き、実績を積み上げるには経験だけでなく、新しい知識の習得が必要不可欠である。

仕事で結果を出すには経験が必要だが、経験だけでは未知のものに対処することは不可能だ。経験と知識、2つ揃ってはじめて「知恵」となる。
ところが苦学の末に就職に失敗すると、青春を犠牲にした反動で勉強が嫌いになってしまう、と言った人が出てくる。これはある意味で、中高生時代に勉強が嫌いだった人間よりも深刻だ。

中高生時代に勉強しなかった者は、必要に迫られるキッカケさえあれば、大人になってから勉強する人間も意外にいるものである。
確かに一流企業で安定高収入を得たいなら、中高生時代に青春を犠牲にしてでも勉学に打ち込んだ方が得しやすくはあるのだが、二流企業(大手子会社や準大手など)は学歴がなくとも、転職市場でチャンスが巡って来ることも、またあるのである。

中高生時代がダメでも、大人になってから研鑽を続けた者には、思わぬチャンスが巡って来ることがある。
勉強が嫌いになってしまうのは、そうしたチャンスをも遠ざけることになってしまうのだ。

勉強は必要性を感じて自発的に行うようになるのが良い

新卒に全てを賭けるなら、中高生時代に青春を犠牲にしてでも勉学に打ち込んだ方が、得をしやすいことは確かである。
しかし、皆が安定志向になればなるほど日経225企業の人気は高まるし、新卒に全てを賭けるリスクも高まるところである。
特に現在は定年が65歳まで伸びているし、恐らく将来的には70歳まで伸びるであろう。職業生活が非常に長丁場である。だからこそ、小中高の9年間に勉強に全てを注ぎすぎてはならない。

大事なことはお大人になってからも研鑽し続ける持久力だ。小中高の9年間で頑張り過ぎて大人になってから勉強が嫌いになると、それはそれでお先真っ暗である。
新卒時に就職した会社に定年まで居続けられる人は、そう多くはない。青春時代に詰め込み過ぎて勉強嫌いの大人になってしまうようであれば、まだ大人になってから勉強をしても遅くはないだろう。
少なくとも、日本には資格試験は多くある。大人になってから勉強を始めても、なんとかなる環境は整っているのだ。

昔のように「最初に入った会社で生涯を終える」なら良いのだが、今は2人に1人が転職をする時代となった。
今後は恐らく日本人の1社あたりの在籍期間はより少なくなっていくだろう。
その時代に大事なのは「大人になっても勉強を続ける持続力」であり、子供の内から勉強を我慢させて燃え尽きさせるようなことは、しない方が良いのではなかろうか。

イーロン・マスクは昭和の日本人だったのか

世の中高年が思う以上に中高生は子供である

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進路選択   2023/05/26   センチュリー・大橋

中高生時代に勉強に打ち込ませることが必ずしも良いとは言えない⓵

最強人生の定説は変わっていない金沢港に停泊するSilver Muse

写真:金沢市のフリー写真素材より

「良い大学に行って良い会社に行け」
これは「今となっては古い考え方だよね」という声が聞こえている。
その一方でコロナ禍を通して公務員の人気は高まると言った現象が起きている。
良い大学に行って良い会社に行くと言うのは、今や昔として扱われることも出てきたが、残念ながらこの最強の定説は今もまだ有効である。
何せウォーレン・バフェットが株を買ったことで一躍株価が上がった三菱商事であるが、この三菱商事、基本的に新卒以外に入社するチャンスは殆どない。しかも高学歴でないと基本的に入社できず、東大生の志望先としては3位の人気度がある。

「良い大学出て良い会社に入れ」という昭和の最強伝説は今も有効であり、寧ろコロナ禍を通してますます説得力が高まる定説となる。

高学歴同士の熾烈な競争

昭和の最強伝説が今も有効である以上、中高生時代に青春を犠牲にしてでも勉学に打ち込んだ人間の方が、将来は得する可能性は高くなる。
しかし、ここに一つの問題が発生する。それは[高学歴でも良い会社に入れる(競争に勝てる)のは一握り]であるということだ。
不安定な時代になればなるほど、安定した組織の価値が上がる。尤も「安定した組織」とは言ったものの、大企業ですら富士フィルムが今やカメラフィルムなど殆ど作らず、化粧品やITの分野を主たる事業にしているように、安定収益を得ている会社に入れても配置転換させられることがあるが…。

不安定なほど大きな会社や公務員に人気が集中しやすくなると同時に、例えば日経225なんて言われるような大企業は概ね、新卒時くらいしか入社できるチャンスはない。彼らは常に買い手市場でいるから、わざわざ中途採用なぞする必要がない。こうした企業に優秀な学生同士が競争して入社するのである。

残念ながらそれらの企業の椅子は僅かだ。そのため、良い大学を出ても良い会社に入れるとは限らず、同志社大学を卒業した者ですら不動産売買の営業で汗水垂らしてビラ配りをするような、地道な仕事をすることもままある。

就職で上手く行かなかった者が高学歴ニートになりやすい

「今(青春)を犠牲にした分あとで報われるハズ」
残念ながら最強の人生(幸せな人生とは限らない)の定説は昭和も令和も変わっていない以上、勉強など早くやっていた方が、得する可能性は高くなる。
新卒一括採用の問題点は議論されることはあるが、とは言え新卒一括採用は企業側にも学生側にもメリットがあって続いているものだ。

一件、企業側のメリットだけが考慮されがちな新卒一括採用だが、実は学生側にも実務経験者と同じ市場で戦わなくて良いという大きなメリットがある。
そして新卒は職業選択の自由度が最も高く、それは属する大学のランクが高いほど選択肢が広がり、高い収入、安定した会社を選びやすくなるということだ。

難関大学に受かった学生は中小企業など行きたいとは思わないだろう。それは(受験勉強の)苦労に見合った収入が提示されないからだ。
しかし、学生の数より大手企業の採用人数は少ないのである。それ故に必ず就職戦線で負ける者もでる。
或いはせっかく大手に就職しても、電通のようなブラックな企業に入ってしまうこともまた、ある。
こうして就職に失敗した者が、高学歴ニートとなってしまうのである。

イーロン・マスクは昭和の日本人だったのか

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職業選択   2023/05/19   センチュリー・大橋

イーロン・マスクの考え方がザ・昭和の日本人:Twitter買収後の悲劇⓶

そして離職は相次いだ

写真:白山市のフリー写真素材より

粛清人事を否定するつもりは無いが、人員整理の為に希望退職を募ったら、会社に居て欲しい人間まで辞めてしまうのはよくあることだ。
これは日本でも起こることであるし、当然Twitter社でも起きたことである。
そう、ハードコアな働き方を求めた結果、コアな人材まで退職希望が出てしまったのだ。
こうなると会社としては窮地になる。何せハードコアな働き方を求められたものだ。従業員は身の危険を感じて辞めたくなるというのが今回の事件の実態であろう。

粛清人事の果てに

組織に変革をもたらすにあたり、粛清は有効な手段である。少なくとも人材の流動性の低い日本では、恐怖による経営もまた機能はするであろう。
一方、人材の流動性が高い国、業界ではそうとも限らない。まして「もともと他人の持ち物だった会社」となれば、その会社にはそれまでの風土がある。それが経営再建の難しいところであるが、ショック療法を用いることで「優秀な人材ほど流出する」危機に瀕するのだ。

ましてアメリカは人材の流動性が高い国である。ハードコアな働き方を求め、リモートワークも認めて貰えないなら3ヶ月分の退職金を貰ってアッサリ辞める。
その動きはマスク氏は想定出来なかったらしく、結局のところリモートワークも一部認めることになる(それでも週一の対面ミーティングは求めているが)。

言ってしまうと「恐怖による経営」は「転職先の無い労働者には有効」だ。しかし「転職先のある労働者」には逆効果でしかない。また、優秀な人間というのは得てして「転職先のある労働者」である。
粛清人事をやった結果、優秀な人間が「荷物を纏めて出て行きます」では更に会社が傾くだけである。

それでもTwitterはしばらく安泰であろう

会社としてのTwitterは当面荒れるであろうが、事業としてのTwitterは当面は安泰であろう。
Twitterという会社にとって悲劇だったのは、イーロン・マスクという男に買収されたことである。
Twitterという事業にとって朗報だったのは、イーロン・マスクという男に買収されたことである。

一見矛盾したものであるが、この矛盾が矛盾で無くなる理由はイーロン・マスクという男がツイ廃にして、アンチ・ザッカーバーグだからである。
ツイ廃にしてアンチ・ザッカーバーグのマスク氏はFacebookをやっていない。テスラもSpaceXもFacebookのアカウントは持っていない。

言ってしまえばTwitterの存続は他でもないマスク氏の利益のためにある。
今やマスク氏は世界一の富豪となった。その限りにおいて、事業としてのTwitterは当面は安泰である。会社としてのTwitterは当面は動乱が続くであろうが、ユーザーはそこまで大きな心配をしなくても良くなったのでは無かろうか。

東京は人が多すぎる-過密すぎるが故に問題も起こる

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事業戦略   2022/11/19   センチュリー・大橋

イーロン・マスクの考え方がザ・昭和の日本人:Twitter買収後の悲劇⓵

写真:白山市のフリー写真素材より

Twitter社買収にあたり、イーロン・マスク氏は従業員の75%は削減予定であると言われていた。
2022年の10月末にTwitter社買収を完了してからというもの、人員削減は早速始まっているようだ。
イーロン・マスク傘下になったTwitter社は「週最低40時間はオフィスへの出社が必要」になり、IT企業でありながら在宅勤務は認められない方向性になるなど、彼が手掛けた事業の先進性に反して古い働き方に戻ろうとしている。
その姿はまるで日本の「昭和のオヤジ」を見ているようである。

そもそも何故Twitter社を買収したのか

実のところ尤も不思議に感じられるのは何故マスク氏がTwitter社を買収しようと思ったのかというところである。
「金持ちの道楽」と言ってしまえばそれまでであるが、日本はともかく、アメリカの主流を張っているSNSはTwitterではない。基本的にはFacebookが主流であり、日本と比べればTwitterユーザーの割合は多くは無いのだ。

1つ言えば、マスク氏はザッカーバーグ氏とは不仲であることがTwitter社買収の遠因かも知れない。ザッカーバーグ氏と不仲であるからして、当然Facebookなど使わない。それ故にマスク氏の主要な投稿元はTwitterとなる。
何しろマスク氏のザッカーバーグ嫌いは徹底している。テスラもSpaceXも企業としてFacebookのアカウントは所持していない。
つまり、マスク氏の私生活はTwitterと一蓮托生と言っても良い。ある意味でツイ廃なのだ。

また、Facebookと比べると、Twitterは扇動性に優れたSNSであり、ある意味でマスク氏との親和性は高かったとも言える。
そういう意味では、確かにTwitter買収は他でもないマスク氏のためにあると言えよう。ツイ廃としてはTwitterの存続が出来なくなるのは問題であり、Twitterを存続させるために、自らTwitterの神となる道を選んだということであろうか。
少なくとも今やジェフ・ベゾフ氏を凌ぐ富豪になったマスク氏には、それだけの力はあったのである。

基本的にマスク氏の価値観は昭和のオヤジに近い

ところでマスク氏は時折、日本を気にかけているかのような発言をすることがあるが、それもある意味でその筈かもしれない。
イーロン・マスクという人物の基本的な価値観は「昭和のオヤジ」に近いのである。

昔、リゲインのコマーシャルでは「24時間闘えますか」というフレーズがあった。尤も栄養ドリンクを飲んだところで24時間闘えるようにはならないが、その時代のサラリーマンはそれだけ猛烈に働いたということである。
何より、マスク氏自体も会議室に寝袋を持ち込んで泊まり込むほど猛烈に働いているが、マスク氏の発言には昭和の日本人を理想とするかのような発言がある。

「寝ている時間以外はがむしゃらに働いてください。他の人が50時間働いている時に100時間働けば、2倍のことを成し遂げられるはずです。」

当然そんなことはない。だいたい人間は1日で12時間勤務すると泥酔状態で仕事しているのとほぼ同じような状態になると言う。更に言えば、裁量のある経営者と裁量のない労働者では仕事に対するストレスも異なるし、何より創業者には創業者パワーがある。創業者と労働者は完全に別の生き物と心得た方が良い。

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就労形態   2022/11/17   センチュリー・大橋
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